2026/7/23
トコジラミ駆除
トコジラミは凍らせると死ぬ?凍らせる駆除の落とし穴と確実な対処法

近年、トコジラミ被害が増加しており、「トコジラミを凍らせて退治する方法」について質問を受ける機会が多くなっています。
本記事では、「凍らせて死ぬ温度と日数」「冷凍庫と冷却スプレーの使い分けと落とし穴」から「確実に駆除するための進め方」まで、トコジラミ駆除の実績が豊富な一般社団法人全国鳥獣害衛生防除協会が解説していきます。
トコジラミは凍らせると死ぬ?まず知るべき結論
トコジラミは凍らせれば死にますが、家庭用冷凍庫(-18℃前後)なら卵を含めて4〜5日の連続冷凍が必要で、大型の家具や隙間の奥には冷気が届きません。
まず押さえておきたいのが、「凍らせる」には2つのやり方があるという点です。
ひとつは衣類や小物を冷凍庫に入れて凍らせる方法、もうひとつは冷却スプレー(凍殺ジェット)を虫に直接吹きかける方法です。
どちらも殺虫成分を使わないため抵抗性の個体にも作用しますが、それぞれに得意・不得意があります。

また、誤解されやすいのが「凍らせる=一瞬で即死」というイメージです。トコジラミは低温そのものよりも、「一定の低温にどれだけの時間さらされ続けたか」で生死が決まります。
短時間の冷気では仮死状態になるだけで、常温に戻ると再び動き出すことも珍しくありません。ここを外すと、「凍らせたのに生きている」という失敗につながりますのでしっかり認識しておきましょう。
なぜ「凍らせるだけ」では駆除に失敗するのか?
凍らせるだけで駆除に失敗しやすいのは、家中に散らばったトコジラミと卵のすべてに、必要な低温を必要な時間だけ届けるのが、現実にはほぼ不可能だからです。
その理由の根っこにあるのが、トコジラミの繁殖力です。トコジラミの雌は生涯で約200〜500個の卵を産み、室温16〜32℃なら8〜9日で孵化し、40日ほどで成虫になります。
出典:厚生労働省「トコジラミとその効果的な防除法」

この繁殖スピードが意味するのは、駆除でたった数匹、あるいは卵をいくつか取り逃がすだけで、そこからあっという間に元の被害に戻ってしまうということなんです。
トコジラミが低温に弱い理由
トコジラミが低温に弱いのは、体液が凍る「凍結傷害」によって体の細胞が壊れてしまうためです。
トコジラミは、カメムシ目に属する吸血性の昆虫で、ナンキンムシとも呼ばれます。多くの昆虫と同じく、トコジラミも体液が凍る温度(過冷却点)を下げて寒さをしのぐ「耐凍」戦略を持っています。
ただ、この防御をさらに下回る低温に一定時間さらされ続けると、体液が凍りついて死に至るんです。
「凍らせる」「熱で倒す」といった物理的な駆除が注目されているのは、国内で採取されたトコジラミの約9割が、ピレスロイド系殺虫剤への抵抗性遺伝子を保有していたという背景があるためです。
出典:日本衛生動物学会「トコジラミのピレスロイド感受性に関する全国調査」
トコジラミは何度で・何日で死ぬ?温度と時間の早見表
トコジラミは-16℃前後の環境に約80時間さらされると、卵を含む全ステージが死滅します。温度が高いほど、必要な時間は長くなります。 研究で報告されている、トコジラミを完全に死滅させる低温と時間の関係は、次の通りです。
-20℃:約48時間(2日)で全ステージ死滅
-16℃:約80時間(3日半)が必要
-15℃:約3.5日が必要
家庭用冷凍庫(-18℃前後):安全をみて4〜5日が目安

家庭用冷凍庫はJIS規格で-18℃を基準に設計されています。理屈のうえでは、4〜5日入れておけば卵まで死滅する計算になりますが、ここで絶対に知っておいていただきたいのが、卵のしぶとさです。
同じ研究では、-25℃という厳しい低温に短時間さらされても、生き残ったトコジラミの卵が観察されています。成虫が死ぬ条件でも、卵だけが耐えてあとから孵化してくることがあるんです。
つまり「表面が凍ったから、大丈夫」ということではなく、凍らせる駆除でいちばん取りこぼしやすいのが卵であり、日数を削るのは禁物だと覚えておきましょう。
なお、冷蔵室(3〜10℃程度)や冬の屋外に置く程度では、トコジラミは死にません。トコジラミは寒さに強く、日本の冬をそのまま越してしまう虫なので、中途半端な低温はほとんど意味がないんです。凍死を狙うなら、必ず冷凍室の低温を使いましょう。
冷凍庫でトコジラミを凍らせる方法と限界

冷凍庫で凍らせられるのは、衣類・ぬいぐるみ・旅行カバンなど、袋に入れて-18℃を4日以上保てるものに限られます。 具体的な手順は、以下の通りです。
対象物を密閉できる袋に入れ、空気を抜いて口をしっかり閉じる(庫内やほかの物への拡散を防ぐため)
冷凍庫の奥など、-18℃以下を保てる場所に入れる
最低4日、できれば5日そのまま凍らせ続ける
取り出したら袋のまま室温に戻し、縫い目や折り返しにトコジラミや卵殻が残っていないか確認する
一点、注意したいのが結露です。精密機器や革製品など水分に弱いものは、冷凍によって故障やカビの原因になることがあります。取り出したあとは、袋のまま室温に戻して結露が引くのを待ってから開封してみてください。 そして、これが冷凍駆除の最大の限界なんですが、マットレスやソファ、ベッドフレームといった「冷凍庫に入らないもの」には、この方法がまったく使えません。
やっかいなことに、トコジラミが最も潜むのは、まさにこうした大型の寝具や家具の隙間なんです。 つまり冷凍庫での駆除は、旅行から持ち帰った衣類やカバンなど、限られた持ち物の応急処置と割り切るのが現実的といえます。
トコジラミに冷却スプレーは効く?3つの落とし穴

冷却スプレーは、直接当たったトコジラミの個体には有効ですが、隠れた虫や卵には冷気が届きにくく、これ1本で完全駆除するのは難しいのが実情です。
冷却スプレーとは、-85℃前後の冷気を噴射して、その場で虫を凍らせる殺虫剤のことです。殺虫成分を使わないため、薬剤抵抗性のトコジラミにも作用します。手軽で便利な反面、過信すると次の3つの落とし穴にはまります。
隙間の奥に届かない:噴射の入口で霜ができて隙間をふさぎ、奥に潜む個体まで冷気が伝わらない
卵に効きにくい:卵は殻に守られており、瞬間的な冷気だけでは死にきらないことがある
吹き飛ばして取り逃す:小さなトコジラミは噴射の勢いで飛ばされ、十分に凍る前に別の場所へ逃げてしまう
体表に霜が下りるまで至近距離で当て続けないと効果が出ないため、「サッと吹いて終わり」では生き残りが出やすいんです。見えている数匹を凍らせても、全体の解決にはならないということなんです。
トコジラミ駆除の対応方法を比較
手軽さでは冷却スプレー、即効性では熱による対応、確実性ではプロへの依頼が優れており、目的と被害の段階に応じた使い分けが必要です。 家庭で選べる主な方法の特徴を整理すると、次のようになります。
冷凍庫:袋に入る小物なら卵ごと駆除できるが、-18℃で4〜5日かかり、大型家具には使えない
冷却スプレー:その場で凍らせられて手軽だが、直接当たった個体限定で卵に弱い
熱・スチーム:60℃で10分、100℃なら数秒で死滅。卵にも有効で、圧倒的に即効性が高い
高温乾燥機:60℃以上で30分以上回せば、衣類・寝具を卵ごと処理できる
市販殺虫剤:スーパートコジラミには効きにくい
プロ依頼:薬剤・熱・スチームを組み合わせ、潜伏場所ごと徹底処理できる
出典:国立健康危機管理研究機構「トコジラミの最近の傾向と防除に関して」
こうして並べてみると、家庭でできる範囲では「凍らせる」よりも「熱」のほうが、はるかに短時間で卵まで倒せることがわかります。時間のかかる冷凍を待つより、80℃以上のお湯やスチーム、高温乾燥機を組み合わせたほうが早いケースは多いんです。
結局どうすればいい?確実に駆除するための進め方
持ち込み直後で数が少なければ自力の凍結・加熱で対応できますが、刺され跡が続く・繁殖しているという場合は、専門業者への依頼が確実です。
自力で対応できるケースと、プロに任せるべきケースの目安は、次の通りです。
自力で対応できる:旅行から帰った直後で、衣類やカバンに数匹という段階。袋に密閉して冷凍、または高温乾燥・熱湯で処理する
プロに任せるべき:毎晩のように刺される、複数の部屋で見つかる、赤褐色の血糞や白い卵殻が見つかっている段階
自力で処理する場合も、卵は取り残しやすいため、最初の処理から1〜2週間後、孵化のタイミングを狙ってもう一度同じ処理を行うと、生き残りを大きく減らせます。
また、旅行や出張から帰宅したときは、玄関先でスーツケースを開けて中身を確認し、衣類はそのまま洗濯・高温乾燥に回すと、持ち込みからの繁殖を防ぎやすくなります。 早く動くほど、被害も費用も小さく済みます。
放置して繁殖が進むと、駆除に数十万円かかる例もあり、市販の殺虫剤が効かず相談が高止まりしていると報じられています。
なので、「凍らせても刺され跡が減らない」という方は、すでに自力対応の限界を超えている可能性が高く、専門業者の調査を受ける必要があります。
おわりに
トコジラミは凍らせれば死ぬという事実自体は正しいですが、「-18℃で4〜5日」という低温と時間の条件を満たす必要があり、大型の家具や隙間の奥までは冷気が届きません。
また、冷却スプレーも直接当たった個体に限られ、いちばん取りこぼしたい卵ほど寒さに強いのが実情です。
なので、凍結は応急処置と位置づけ、即効性の高い熱処理や、潜伏場所ごと処理できるプロ対応と組み合わせるのが、最も確実です。
トコジラミ駆除でどの業者に相談していいかわからないという方は、当協会までお気軽にご相談ください。
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